外壁タイルの剥落と対策

近年、古くなった外壁タイルの落下事故が多発している。

耐久性と美観に優れたタイル仕上げは、落下リスクという弱点がある。
しかし、新たな工法でその弱点を克服する取り組みが広がっている。
注目されているのが、モルタルに代えて有機系接着剤でタイルを張る方法だ。
施工費はモルタルより3割増しだが、安全性が評価され選択する企業が増えている。

タイルの設計や施工による瑕疵は、法律的にも長期にわたって大きなリスクがある。
というのは建設業者側のリスクのこと。

なので初期投資が多少割高でも、剥落リスクを少なくするために、
長い目で見れば3割増しで済むなら経済的な手法ともいえる。

平成25年(昨年)4月7日に東京都内で立て続けに起こった強風による外壁タイルの
剥落事故。

下の写真は剥落事故があったマンションの1つ。
撮影時は、既に事故から1年以上経過しているが、有効な安全策が講じられていない。
タイルの浮きが進行し、今にも剥落しそうな危険な状態が続いており、
下は駐車場として利用されているため、人身事故につながる可能性もある。
タイル剥落
今回の主な要因は「施工不良」だ。
タイル張り付け面の清掃をしないで施工したり、張り付けモルタルの不足によるもの。

マンション事業者のダイナシティは、2008年に経営破綻している。
また、施工者の南海辰村建設は剥落事故が起こった時点で11年経過しているので
瑕疵補修期間外としており、施工ミスを認めずに自然による経年劣化が原因と

現在のマンション管理会社である日本ハウズイングは、剥落発生以後、タイルの
浮きを発見しては危険部位のタイルを剥すという応急的対応を繰り返すのみという。

年末に大規模改修の時期を迎えるので、別の施工会社に依頼して抜本的な対策を
講じるようだ。

このようなタイル剥落事故は私の身近なところでも相当数発生している。
タイル剥落現場

欠陥マンションの損害賠償訴訟で、設計者や施工者が負うべき責任範囲は最高裁も具体的に示している。判決では建物の構造耐力に関係しない瑕疵であっても、外壁が落下して通行人に危害を与える恐れがあるような場合には、基本的な安全性を損なう瑕疵にあたると判断している。
民法にて、設計者や施工者は、完成後20年間にわたってタイル剥落による人身事故
の危険性を回避する義務を負う。
民法による不法行為

タイル仕上げの問題点は剥落だけではない。

生涯におけるライフサイクルコスト(LCC)を10階建てのマンションで比較してみると、
完成後30年間でタイル張りの総額は6,600万円で吹き付け塗装より約1割高くなる。

タイルのメンテでは、浮きやひび割れによる張替え。
全面打診検査による点検費用などもコストアップの要因だ。
コスト比較
タイルと吹付け比較

タイルの改修方法
タイルの改修方法

とはいっても現在でも多くのマンションはタイル張りによって施工されている。
一定の品質管理下において施工されたものならあるていどの精度は保てるが、職人や管理者不足の現在では、どこまで品質が確保されているのかわからないのが現状です。

特に築年数が10年を超えてくるとタイル剥落のリスクも加速的に増加してくるので注意したいところです。

最初に記載した接着剤も私は何度か使用したことがあります。
確かに高価な接着系の施工は検討材料のひとつにはなりますが、必ずしもモルタルより優れているとはいえないと考えています。

やはり外壁にタイルを採用するなら、適切な時期に適切なメンテナンスを行うことが大切です。
それ以前の適切な施工というのは当然ですがもっと大切です。

メンテナンスもただ頼めばいいというものではなく、責任を持ってしっかりやってくれる施工業者の選定がもっとも大切だと考えています。